森とうです。こんにちは。千葉県柏市で結婚相談所を経営しています。
先日、IBJ全国定例会が開催されました。そこで「結婚相談所業界の巨人IBJが、ついに婚活アプリに本格参入する」という話が出ました。
「ついに来たか」という思いもありますが、冷静に考えれば必然の流れ。日本も人口減少・少子化・婚姻数の減少が進んでいます。結婚相談所業界そのものが伸びしろに限界を抱えるなか、IBJがどう舵を切ろうとしているのか――今回はその現実を、考えてみたいと思います。
いつにも増して、マジメに書きましたので、白目をむかず、最後までお付き合いください!
IBJの成長と日本の現実
婚活アプリ市場は、IBJの推定によるとすでに650万人規模に達しています。一方で、結婚相談所業界はどうでしょうか。IBJですら、2025年現在で会員数10万人程度。その他の団体を含めても全体で数十万人規模にとどまります。
私が開業した2016年当時、IBJの会員数はまだ5万人弱、加盟店も1,300社ほどでした。それが10年足らずで、会員は10万人、加盟店は4,800社を超えています。これは驚異的な成長です。
さらに成婚組数も、2024年度は16,000組を突破。業界内では「IBJの成婚数は日本全体の婚姻の2%を超えているのではないか」と言われるほどの存在感にまで成長しています。石坂社長がかつて掲げた「日本の婚姻数3%をIBJ婚に」という目標もまもなく。これは本当にすごいことです。
しかし――ここからさらに日本市場で婚活者を自然増で積み上げていくのは難しいのも現実。結婚適齢期の人口そのものが減少しており、少子化はかつてないスピードで進んでいます。
そして、「人口減少対策」という国が本来もっと取り組むべきことを、一企業・IBJが担わされるような状況下で、母数の大きな婚活アプリ市場へと踏み出さざるを得なかった――。これがまったなしの現実だとは思います。
IBJオンラインとは
これまでIBJは「ブライダルネット」や「ユーブライド」といった婚活アプリを運営してきましたが、いずれもIBJの名前を前面に出す形ではありませんでした。今回の「IBJオンライン」は、IBJというブランド名を掲げた本格的な参入として位置づけられています。
特徴はシンプルで、独身証明書の提出なし・人的サポートなし。婚活の敷居を一気に下げたサービスです。
ただし誤解のないように強調したいのは、IBJオンラインの会員が、IBJ結婚相談所データベースを利用することはできないという点です。結婚相談所は、公的書類を提出した方だけが登録できる安心できる仕組みだからです。
AI婚活のメリット
- 気軽に始められる
- 登録者が多く、出会いの母数が大きい
- コストが抑えられ、効率的に出会える
気軽さ・効率・低コスト。 この三拍子が揃っていることが、婚活をスタートさせるハードルを一気に下げています。
さらにAIアルゴリズムによるマッチングは、利用者が増えることで学習が進み、精度が上がります。今後は「婚活アプリ好みの人」と「結婚相談所を好む人」の行動パターンの違いもより明確になり、分析する側としては興味深い視点です。
AI婚活の課題
一方で、AI婚活には課題もあります。サポートがないため、婚活者が「本当にこれでいいのか」と迷ったときに、結局は自分で検証し続けなければならない点です。
AIはChatGPTをはじめ、基本的に「ポジティブに返答する」設計思想を持っています。ユーザーが聞きたい言葉を返すため、ときに思考の偏りを助長してしまうリスクもあります。そして人は「心地よい答え」に流されやすい。AIの肯定が結婚観を狭めてしまうこともあるのです。
そして私が一番懸念しているのは、私たちがすでに「AI=24時間すぐに答えてくれる存在」を当たり前に感じ始めていることと。
結婚相手は人間です。思い通りにならないし、沈黙することもある。結婚相手よりもAIの方が都合がいい――そんな発想が生まれないか。そこに少し不安を覚えます。
でも同時に、「人間はそうはならない。人間だから」という思いもあります。
ちょっと『相田みつを』的な表現ですが。
結婚相談所の役割
だからこそ、結婚相談所の存在価値はこれからも残るのだと思います。
まだ結婚を経験したことがない方にはイメージがつきにくいかもしれませんが、多くの仲人が口を揃える「成婚はゴールではない」は、入籍した翌日から実感します。私はブログでも会員様との面談でも繰り返しお伝えしてきました。
結婚するだけなら簡単。
続く結婚をするのが難しい。
いまや結婚観は多様化しています。だからこそ仲人には、一人ひとりに寄り添い、その人の状況に即した助言をする力が求められます。効率だけでは届かない「人と向き合う難しさ」を、一緒に考え、乗り越える存在。これが結婚相談所の役割だと考えます。
これからの結婚とAI
結婚相談所という機能がこれからどう進化していくのか。それは私自身も模索しています。ただ、確かなのは「結婚は人間と人間とで築くもの」だということ。
AIは優秀です。でも、人間ならではの細やかな心の動きや、ちょっとした表情の揺れを読み解くことは、まだ難しい。
それでも――時々思います。
人間の心のほうがAI化されていくのではないか。
便利さと効率を享受する一方で、人間のあいまいさ、不自由さは嫌われる。
それは結婚に必要な「忍耐」や「対話」とは確実に相性が悪い。
そうした一抹の不安を抱えているのは、きっと私だけではないと思います。
あなたには人間らしい俯瞰力も忍耐力もある
この小難しい業界分析を自分事として読み切れる方は、きっと人生に対する責任も俯瞰力もそして忍耐力もあると、思います。
なにより、その力があれば、婚活も最後まで頑張りきれるはず。――もしご一緒できたら、全力で伴走します。
参考資料:
- 株式会社 IBJ 2025年12月第2四半期 決算説明資料
- 株式会社 IBJ(結婚相談所事業)2025年9月次 KPI 報告